ヘリコイルを入り込まないように挿入するには

用途を問わず、それなりに摩耗や損傷があるアッセンブリーを取り扱っていると、ねじ山がつぶれることがあるかもしれません。そんなときは、ヘリコイルを挿入して新しくねじ山を作り、ねじを締められるようにします。

今回はヘリコイルの機能についてお話します。

ヘリコイルは優れた修理方法ですが、長期間使用すると、ねじを外すときにヘリコイルが奥に入り込んでいる可能性があります。

フォードF1 1949フラットヘッドV8エンジン、排気量239立方インチ(筆者所有)

このイライラさせられる問題は回避できます。フォードF1 1949フラットヘッドV8エンジン(排気量239立方インチ)のヘッダーボルトを補修したとき、ヘリコイルが奥に入り込まないように調整が必要でした。

ソリューション

1.メーカーの注意事項にしたがい、つぶれたねじ穴を加工する

まず、メーカーの注意事項にしたがい、ねじがきちんと合うように穴あけ加工をします。適切なドリルビットのサイズは、必要なねじ径と加工する材質によります。元の穴より深く加工しないように注意してください。穴があいたら、圧縮空気を吹きつけて加工屑を取り除きます。

2.ヘリコイルキットの指示にしたがい、加工した穴にねじを切る

ねじ切りとは、穴に新しいねじ山を加工する作業です。ねじがぴったりおさまるように、完全にまっすぐにねじを切ります。手ごたえを感じるまで静かにタップを回します。回し終えたら、ゆっくりとタップを引き抜きます。再度、圧縮空気を吹きつけて加工屑を取り除きます。 

3.ロックタイト(LOCTITE)®2620ねじゆるみ止め用接着剤をヘリコイルに塗布する

おなじみの赤色の高強度接着剤、ロックタイト(LOCTITE)®2620を使用します。今回は挿入工具にヘリコイルを装着して、ヘリコイルの外側にロックタイト(LOCTITE)®2620を塗布します。ヘッダーボルトが受ける高温に耐えられる高強度のねじゆるみ止め用接着剤として、ロックタイト(LOCTITE)®2620を選定しました。用途に応じて、他のタイプのねじゆるみ止め用接着剤をお選びいただいても構いません。 

4.新しく切ったねじ穴にヘリコイルを挿入する

ねじゆるみ止め用接着剤(赤)を塗布したら、新しく切ったねじ穴にヘリコイルを挿入します。ロックタイト(LOCTITE)®2620の硬化時間は塗布時の温度によって異なりますが、完全な強度を得るために24時間放置されることをおすすめします。 

これで作業は完了です。ねじを外す必要があっても、
 ロックタイト(LOCTITE)®2620を塗布したヘリコイルは決して奥に入り込みません。 

ロックタイト(LOCTITE)®262ねじゆるみ止め用接着剤を代わりに使えますか?

お使いいただけます。ロックタイト(LOCTITE)®262も高強度ねじゆるみ止め用接着剤です。ただし、ロックタイト(LOCTITE)®2620が180℃まで耐えられるのに対して、ロックタイト(LOCTITE)®262の最高耐熱温度は340℃です。今回ロックタイト(LOCTITE)®2620を選んだ理由は、このような優れた耐熱性に加えて、潤滑剤、腐食防止剤、保護液などの付着にも耐えられるからです。ロックタイト(LOCTITE)®262の場合は、加工したばかりのねじ山に塗布するだけです。その後ヘリコイルを挿入し、放置して硬化させます。 

ロックタイト(LOCTITE)®PC 3967フォーマスレッドを代わりに使えますか?

ヘリコイルの代わりに、ロックタイト(LOCTITE)®PC 3967フォーマスレッドを使用するケースもあります。ドリル、工具、インサートを使用せずに、摩耗したり、つぶれたり、だめになったりしたねじ山を修復するためのキットです。 

作業は5分程度で完了します。完成したアッセンブリーは広い温度範囲で使用でき、最大176 N・mのトルクに耐えられます。(M25の場合)ただし、各用途において使用の適否を判断してください。また、PC 3967を用いた修理が可能な場合でも、ヘリコイルの方が高い強度が得られる点に留意してください。